ノマド 漂流する高齢労働者たちを読んで

映画「ノマドランド」の原作の「ノマド 漂流する高齢労働者たち」を読みました。映画はストーリーになっていましたが、原作本は著者のレポートという印象です。

この本の「漂流する高齢労働者」とは、定住する場所を失い車上生活者となり、季節によって移動する50代以上の人たちのことです。元々は中流階級で家を持ち、仕事をしていたのだけれど、いろいろな事情で経済的に追い込まれて、一番大きな出費である家賃や住宅ローンの支払いの継続を選択せず、車での生活を選択した人たちです。

映画「ノマドランド」のモデルになった女性は、夏はキャンプ場で、冬はアマゾンの倉庫で働いている64歳です。長距離の移動と住まいは中古のジープに引かれた小型キャビンです。ホームレスの手前の生活と言えるでしょう。(ハウスレスと呼ぶ)

日本では、このような状況に追い込まれることは今のところないと思われますが、可能性はゼロではないでしょう。高齢者を支える社会制度は、年々薄くなって、これは今後も少しずつ剥がされ薄くなるはずです。10年前までは観光地には退職した60歳代であふれていましたが、その光景はなくなりつつあります。裕福な中高年が減りつつあるのはアメリカと同様です。

いろいろなことを考えさせられる本ですが、まずは「漂流する高齢労働者」のたくましさを感じます。彼らは年に1回のイベント以外は、集団で群れることはなく、1人か夫婦2人が生活の基本です。その生活のたくましさを支えるのが、ネット上の繋がりのようです。

車上生活者のノウハウ情報を得る、アドバイスを受ける、仕事を探す、安い医療機関を探す、非常時に助けを求める、励まし合う、これらが断ち切られたら、生活は行き詰まるでしょう。スマホから、時には無料WI-FIサービスの場所を上手に使って繋がり合ってます。

「ノマド 漂流する高齢労働者たち」を読んで、中高年にはネットの繋がりは重要だということを認識しました。家を失ってもネットの繋がりは捨てないと言うことでしょう。

ジェシカ・ブルーダー (著), 鈴木 素子 (翻訳)
2018年
ノマド: 漂流する高齢労働者たち
春秋社

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